column 2023.6.20
 

葡萄の木があるオフィスは、黙々と仕事するだけじゃない。

もめ(葡萄とパスタ)  
 

「葡萄とパスタ」というご近所が集まるシェアオフィス、この場所の活用の仕方が少しずつ見えてきました。

シェアオフィス「葡萄とパスタ」が近所にできて、私の日常に、彩りが少し増した気がする。この場所を説明するには、シェアオフィスという言葉だけでは足りなくて、“彩り”の部分の説明がこぼれ落ちてしまう。公民館のような、馴染みのカフェのような…。

「シェアオフィス」と言い切るには、物足りない。

先日は、葡萄とパスタを"教室"として使ってみた。私がクリエイティブディレクターとして働いている会社の仕事で、成安造形大学の特別講義を担当することになったからだ。授業は「あるもの生かしておもろいもんを クリエイティブディレクション実践」と題し、葡萄とパスタで何らかのイベントを学生たちと作ることにした。たった3回の授業で。

初回授業のイントロダクションは、葡萄とパスタの真向かいにあるUmekojiMarKEtをお借りしました。

土地の空気感を獲得するため、京都R不動産の水口さんと共に近所を歩き、中央卸売市場の水産棟、モノづくりスペース「Kyoto Makers Garage」、90年続く八百屋「西喜商店」などを見学。時間の制約があったため、じっくり味わいきれなかったけれど、このエリアには、新旧ごちゃっと混ざっている感じが面白い。周辺を歩いた後、水口さんにも、葡萄とパスタをどんな場所にしたいのかを尋ねた。葡萄とパスタ単体がどうなるかというよりも、梅小路エリアで働く人、暮らす人が増えて欲しいのだと言う。多くを語りたがらない水口さんも、学生の前だったからか、この時初めて語ってくれた(ちょっとだけ)。

流通の仕組み上発生する食品ロスについてレクチャーしてくれる八百屋、西喜商店の近藤さん。

「あるものを生かす」ためには、この土地、場所、人を知るところから。周辺のフィールドリサーチ。

梅小路の屋上縁日vol.00。

フィールドワークやディスカッションを経て、学生と企画したのは「梅小路の屋上縁日」。葡萄とパスタに訪れたことがない人も来るきっかけとなり、梅小路エリアとの縁を紡ぐイベントだ。屋上の所以は、「葡萄とパスタ」が屋上にあるから。縁日vol.00のコンテンツも、学生がテーマを出し合い決めていった。葡萄とパスタのプランターで採れた野菜や、西喜商店の野菜でホットサンドとミックスジュース作り。その野菜の皮などを再利用した版画ワークショップ。来た人が自由に本を借りられる本棚「葡萄文庫」作り。版画のワークショップには、京都在住のプロの版画家、若木くるみさんに手伝っていただいた。(剃り上げた後頭部に絵を描くパフォーマンスで知られたアーティスト)梅小路の屋上縁日のロゴデザインも、若木さんが手がけてくれた。

版画家の若木くるみさん(右)。

ロゴデザインも若木くるみさん。ディレクションは学生の民谷さん、チラシ(ポスター)のデザインは山本さんが頑張りました。

葡萄文庫は、葡萄の葉を叩いて転写した布を巻き付けて組み上げた。成安造形大学の図書館で使われなくなった本が学生や職員向けに提供されたタイミングと重なり、葡萄文庫の初期蔵書として仲間入りした。この日をvol.00として、ゆるく継続的に屋上縁日を続けていければと思う。今後入居する人も一緒に企めたら面白い。

仕事場、教室、食卓…。入居者と使い方をソウゾウしよう。

梅小路で働く人、暮らす人が増えて欲しい。その一つのトリガーが、「葡萄とパスタ」。日常的に仕事場として利用する人もいれば、私のように"教室"として使うこともある。誰もプロはいないけど、試行錯誤で一緒に野菜を育てたり、葡萄の剪定もする。そして美味しい食卓を囲み、ゆるやかに関係を育んでいく。そうして、「葡萄とパスタ」の中に限らず、ちょっと困って助けてほしい時、美味しいものを一緒に分かち合いたい時に、葡萄とパスタで関わったあの人たちの顔が浮かぶ。今後、入居した人たちにどのように使われていくだろう。いろんな使い方を想像し、創造していけたら楽しいなと思う。

縁日をきっかけに集った近所の住人たち。

パスタだけでなく、シュウマイと餃子を包んで食べるご近所会も開催。

少しにぎやかな方が集中できる…と利用者の声も。

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