2016.8.17 |
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京都、どこに住んだらいい?
京都R不動産の代表より、はじめましてのご挨拶代わりのコラムです。
三方を山に囲まれ、視界を遮る高い建物がない京都の街の景色。
この言葉は知り合いの何人もから言われたものだ。
平安京以来の長い歴史を持つ“古都”というイメージが強いからかもしれないが、実は意外と京都の街は広く、エリアごとでもかなり性格が違う。だからこそ、ひとくちに京都と言っても、どんなエリアがあってどこに住めばいいのか、みなさん迷うようである。
僕は生まれてから大学までずっと京都で、卒業後は東京で10年間働き、いわゆる「Uターン移住」という形で、最近地元に帰ってきた。
大学を卒業するまでは実家暮らしだったが、今回戻ってきて自分の意志で「京都のどこに住むか」を決めた。
僕が選んだのは西院というエリアだ。京都の中でも下町色が強く、例えば飲み屋には地元の人でワイワイ集まって、1軒目も2軒目も3軒目もこの辺りでまかなえてしまう活気を持っている。
そんな下町的な雰囲気でありながら、京都駅や大阪へのアクセスも、高速道路にもすぐ乗れる。
西院駅前と裏通り
自営業だし、毎日決まった場所に通わなければいけないということもなかったおかげで、比較的自由度高く場所を選択できたかなとは思う。
ただ、東京生活が長かったこともあって、出張で東京へ行ったり中部や西日本にもパッと行きやすい、外の人とのつながりもつくりやすい、“フットワークの良い場所”である点は意識した。
あとは生まれ育った場所が京都の中でも静かな住宅街だったので、あえて違う雰囲気の京都に住んでみようと思った。実際に住んでみると、思った通り、朝も夜も街と人が常に動いていて、静かに暮らすより賑わいのある場所の雰囲気を生活に感じたかった今の自分にはぴったりだった。
エリアごとの“色”がわかると、「京都のどこに住んだらいいのか」選びやすい。
というわけで、京都R不動産では折りに触れ、コラムで京都のエリアの話をしていこうと思う。
京都の街のサイズ感をイメージできる人はどのくらいいるだろうか?
京都の中心部は、東京のJR山手線の内側に近いサイズ感である。その範囲の中に、清水寺がある東山の歴史的美観地区だったり、「西陣」のように小さな工場が集まる地区、サブカル聖地の左京区、緑豊かで閑静な住宅街が広がる北山など、京都の主要なエリアがすっぽり入っている。
現在の行政区(白線)やランドマーク(黄色)に、山手線の線路(赤線)を重ね合わせてみる。青線は河川。黒線は京都線(京都-大阪間)/JR琵琶湖線(京都-滋賀方面)。(画像 ©2016 Google、地図データ ©2016 Google、ZENRIN)
このサイズ感には理由があって、それは約1200年前、風水学的に吉ということからこの地に平安京都が置かれた歴史的背景とつながっている。“繁栄する場所”に必要な「四神相応」の思想と当時の京都の地形が合致していたのだ。北の丹波高地が玄武、大文字がある東山(及び鴨川)が青龍、西の嵐山が白虎、南の巨椋池が朱雀、とそれぞれの方角と地勢を司る四つの神がいるとされた。
……噛み砕いて言うと、
・三方(東西・北)を山に囲まれている
・街の中心に川が流れている
・南側は広大な平野が続いている
ということです。
地形的な理由から、京都は人口がどんどん増えていく一方で、盆地を囲む山のせいでそれ以上街が広がることができなかった。だからその中で人の営みが生まれては、入れ替わり……。
“誰でもが顔見知り”というほどコミュニティーが小さくもないし、移動がおっくうになるほど大き過ぎもしない。そんな中で多様なコンテンツが新陳代謝しながら発展し続けている、それが京都という街なのである。
地元のおばあちゃんなどと話をすると、「私は洛中の人間やで。あんたはどこや?」と言われることがあるが、洛中すなわち京都の中心部に住んでいる人はそのことがプライドだったりする。僕は洛外の出身なので、「洛中の方にはかないません」としっかりと“立てる”ことを忘れないようにしている(笑)
住むという尺度で京都を見つめ直したときには、やはり洛中の方が付き合いとかコミュニティーの粘性は高くなる気がする。街のコアなエリアになればなるほど、ちゃんとしなきゃ、みたいな。がっつり京都を感じるなら洛中へ、少しラフに京都に住むなら洛外へ、そういうイメージ。ちなみに僕の感覚で、今京都で面白い場所はちょうど洛中と洛外の境にあるエリアにある。かつての街外れでたぶん治安もあまり良くなかった場所だけれど、そのエリアの持つ煩雑で京都っぽくないちょっと歪んだ感じが新しい表現を生む土壌になっている。
現在の京都の主要ランドマークと行政区分けを入れた地図に、かつての洛中のエリアをはめ込んだ。(画像 ©2016 Google、地図データ ©2016 Google、ZENRIN)
多様で混在、京都に住んでいると実感することである。
京都は「住宅街」「繁華街」「工場街」といったエリアごとの役割の線引きがとても曖昧。この曖昧さが、京都の醍醐味と言ってもいい。神社仏閣の周りに仏具を取り扱う店が集中している、とか、西陣に織物関係の商いが多い、とかそういうことはあるけれども、全体的にはゴチャッとしていて、住宅もお店もオフィスも混在している。
織物工場や製紙工場が多くある西陣エリア。戦火を免れたからこそ、昔と同じ暮らしの風景が残っている。
また近年「職住一体」の暮らしにスポットがあたっているけれど、元々京都は職住一体で、建物の前や1階で商いをして、奥や2階に住むスタイルがあり、そうした建物の使われ方が今でも珍しくない。そして働くところと住むところが近いと、仕事をしている人もいれば学校帰りの子どもたちもいる、ずっと昔から住んでいるおばあちゃんが道端で談笑している姿にも出会う、街がそんな景色になる。みんな混在している感じ。
左は扇子屋。右は昆布屋。京都の街を歩けば見かける「職住一体」のスタイル。
さらに、いろんなバックグラウンドを持った人たちの、外からの流入が非常に多い街でもある。世界各国からの観光客、外国人の留学生、大学や企業の研究員・先生、アーティスト……。
この玉石混交が京都の街で暮らす醍醐味かもしれない。
夏は高温多湿の盆地気候、冬は「底冷え」といわれる寒い日が続く街、京都。地理気候風土的な要素だけを見ると、ちょっと腰が引けてしまいそうであるが、夏は川のせせらぎの上に床をしつらえた川床で涼を取ったり、冬は何気なく入った料理屋さんに火鉢が置いてあったりと、それぞれの季節もちゃんと楽しめる風情と知恵で四季の変化を感じることができる良さがある。
ちょっと脱線してしまったが、まずは、街のサイズ感とその成り立ち、玉石混交さについて伝えたかった次第だ。
「京都、どこに住んだらいいのか」。
今後は京都のエリアごとの特徴を紹介していきます。