



「梅小路で会いましょう vol.3」Kyoto Makers Garage
梅小路で活動する人たちにスポットをあてるシリーズ「梅小路で会いましょう」も、今回で3回目です。今回は、「次世代のワクワクさん」を育てようと奮闘する合同会社TUKUMUの徳山倖我さんに焦点を当てます。
KMGとの歩み
梅小路に、2017年からKyoto Makers Garage(KMG)というものづくり拠点があります。3Dプリンタやレーザーカッターなどを備え、誰もが気軽に試作や制作を体験できる場所としてスタートしました。
徳山さんがこの場所と関わり始めたのは大学時代。情報理工学部でデジタルファブリケーション(3Dプリンタなどを使ったモノづくり)やデザインを学びながら学生団体としてワークショップを企画し、その流れでアルバイトスタッフとしてKMGに出入りするようになります。そこで「ものづくり」と「教育」を結びつける活動を模索し、2023年8月には学生団体を合同会社TSUKUMとして創業させ、活動を広めていきました。
KMGは当初ハードウェア系スタートアップの拠点を想定していましたが、実際にはクラフト系クリエイターが集まり、当初の狙いとのギャップが生まれました。現場で活動を重ねていた徳山さんがKMGを運営することが最善との判断にいたり、2025年4月、合同会社TUKUMUとして正式に本事業を引き継ぐことになりました。

オレンジのフレームが目を引く3Dプリンター。ここから多彩なアイデアがかたちになっていく。
子どもとクリエイターが交わる場へ
徳山さんが描く未来は、日中はクリエイターが制作に励み、放課後は子どもたちが集まって「やってみたい」を形にできる場。例えば「琵琶湖を横断したい」と子どもが言い出せば、船を作るところから始める。流体力学や設計、木工など、その子にとって意味のあることだけを分野横断的に学んでいく。そんなプロジェクトベースドラーニング(PBL)を取り入れながら、自分のやってみたいことを素直に行動に移せる人を育てることを目指しています。
同時に、ものづくりに長けていてもビジネスや知財面で課題を抱えるクリエイターを支える仕組みづくりも進めています。企業案件をKMG経由で受け、信頼できるクリエイターに振り分ける「ギルド」のような体制。アイデアを守り、適切に価値が還元される環境を整えることも「ワクワクさん」を増やす活動の一環です。

KMGのトークイベント風景。SDGsを軸に、梅小路で創作・協働する人たちが、それぞれの視点を持ち寄る場面。
梅小路の文化と、朝の一杯
徳山さんがこの場所に惹かれた理由を聞くと、まず返ってきたのは「ここで活動している人たちへの興味でした」という言葉でした。「ここは唯一無二の空間だと言われますけど、本当にそうだなと思うんです。やってみたいと思ったことを、すぐに形にできる文化がある。段ボールでも洗濯ばさみでもいい、とりあえず作ってみようという空気があって、それがすごく魅力的でした」思いつきをそのまま形にしてみる。そのスピード感に胸をつかまれたそうです。
さらに、このエリアは「クリエイティブタウン」や「京都の“B面”」と言われており、その言葉にも心を動かされたといいます。どちらかというと、A面は「河原町」や「清水寺」など観光や伝統文化の王道エリアで、梅小路はサブカルチャー的な挑戦が息づくB面的な魅力があると感じているそうです。「そういう人たちや、それを応援している人たちと出会えたことも、このエリアの心地よさにつながっていますね」と。
また欠かせないのが梅小路公園。カフェで仕事をしたあとに公園のベンチで頭をリセットするなど、日常の中で心を整える大切な場所だといいます。

クリエイターたちが集まり、思い思いの制作を進める。
そして街の朝を象徴するのが、拠点のすぐ前にある「coffee stand 徴光(ちょうこう)」。リヤカーの小さなスタンドは市場に合わせて早朝から営業し、夜明け前にはランタンとネオンが灯ります。料理人や市場の人々が集い、フォークリフトやターレが行き交う中に小さな灯りがともる光景は、梅小路らしさを象徴する風景のひとつです。徳山さん自身も朝出勤時によく利用しているそうです。
「梅小路で会いましょう」シリーズ、次回第4弾もどうぞお楽しみに。

白いパラソルの下に集う人々。コーヒーの香りとともに、梅小路のまちにゆるやかなつながりが生まれています。

